※本文書の一部を掲載します。

ZESフレームとは何か?

住宅内に“最後の安全空間”をつくるという発想

ZES(Zone-Enhanced Shelter)フレームとは、既存住宅の一室を構造的に補強し、「あとから導入できる命の空間」を創出するための新しい構造技術です。ZES構想は、建物全体の耐震・耐火性能が不十分な住宅においても、「せめて一室だけは確実に守る」ことを目的として民間主導で生まれました。

この構想を立ち上げたのは、災害多発時代に対応したシェルターの研究と普及を目指すマルチハザードシェルター推進協議会(JMSO)です。ZESフレームは、協議会が独自に提案する防災構造であり、既存住宅に対する“後付け型安全空間”としては世界でも類例のない設計思想に基づいています。

その着想は、ラリーカーに搭載される「ロールケージ」に由来します。競技中の激しい衝撃からドライバーを守るため、車体内に独立した鉄骨構造が設けられているのと同様に、ZESフレームでは住宅の一室内部に自立したフレーム構造を組み込み、建物が損壊しても崩壊しない“最後の空間”を形成します。 ZESフレームは、防災目的や居住空間の条件に応じて、以下の三段階モデルが設定されています。

  • ZESフレーム(基本型):室内に鉄骨フレームを設置し、天井崩落や家具転倒などから空間を守るエントリーモデル。
  • ZESフレーム+(補強型):より高い耐力を持ち、複合災害下でも安心を確保する強化モデル。
  • ZESコルゲートフレーム(高強度型):コルゲート鋼板とチャンネル鋼の組合せにより、面剛性・ねじれ耐性・座屈耐性を飛躍的に高めた最上位モデル。

これらのモデルはすべて、「建物全体を補強する」のではなく、「建物が壊れても内部の空間を保つ」ことを目的に設計されています。特に、旧耐震基準の木造住宅やマンションの一室など、構造的制約のある建物にも柔軟に導入できるのが特長です。

また、FEMAのトルネード・シェルター(米国)やMamad(イスラエル家庭用安全室)のような制度は世界に存在しますが、ZESフレームは「後付け可能」「構造強化主眼」「一室限定型」という点で独自の方向性を持っています。

JMSOでは今後、ZESの設計認証制度やパッケージキットの開発を進めるとともに、自治体との連携による助成制度の整備を視野に入れ、誰もが命を守る空間を持てる社会の実現を目指しています。